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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

サーキットを駆ける牙狼が
強き群れをつくる活人術

 
 
レースがシビアであるのは、必ず順位という結果がついてくるからだ。どれだけ努力しても、手応えがあっても、結果の順位が落ちればそれは評価にはつながらない。努力のかげで結果を出せなかったチームもよく見てきた本山氏だけに、「勝てるドライバー」 から幅を広げて、「勝てるチーム」 について聞いてみたい。
 
 

ストイックに求め、伝える

 
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 いろんなチームに移籍していく中で、成績の悪いチームに移籍することも確かにありました。そういうチームは、やはりモチベーションがすごく低いんです。であれば、そのモチベーションを変えていくところから始めなくてはいけないわけです。
 自分の走りで 「今回の本山の意気込みはすごいな」 と伝えていく必要があるのは言ったとおりですが、スタッフにも、徹底して高度なセッティングを求めていきます。ドライバーもクルマの知識がないと 「セッティングについては素人のクセに、何を言っているんだ?」 となりますから、モノを言うには知識が豊富であることが必要です。そのうえで、ハンドル、アクセル、サスペンションなど、一つひとつのメカニズムに細かく注文をつけていくんですね。ドライバーの自分が納得するクルマになるまで、とことんストイックに求めていきます。
 以前、成績が低迷していたチームにいたことがあるのですが、「そこまで言うドライバーはいなかった」 とびっくりされましてね(笑)。 彼らにとっては、すごく口うるさいヤツに見えていたかもしれません。でも、そんな彼らの驚きをさらに踏みにじって、さらに、どんどん要求をしていきました。皆、大変だったと思いますよ。でもそれが結果に表れたんです。レースをするごとに問題点を改善し、最終的には優勝できた。
 そうすると、皆、変わってくるんですよ。高い次元でやることが当たり前になるし、手の届くところに優勝の文字が見えてきたら自信にもなる。すると 「必ず勝つ」 という高いモチベーションが共有できるようになる。それが勝てるチームの、いいスパイラルですよね。
 
 
 
「心を鬼にして」 という言葉がぴったりと当てはまるほど、本山氏はストイックに、高い要求を出し続けていく。それが結果につながると、その方法論が否定されなくなる。これがスパイラルだ。だが、ドライバーがメカニックや監督に要求するように、彼らもドライバーに要求したいものがあるだろう。そういったディスカッションはどのような雰囲気の中で行われているのか。
 
 

仲よし子よしの仲間はいらない

 
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(C)NISMO
 わりと、淡々としているかもしれませんね、そこは。もちろん、基本的な人間関係はいいんですよ。ギスギスしていたり、仲が悪いなんてことはないんです。今のチーム (NISMO) もそうですが、何年も一緒にやっている仲間ですからね。
 仲間、チーム、同僚・・・ いろんな言い方ができますが、それでも分解すると個々のプロフェッショナルの集まりです。ですから、お互いに自分の伝えるべきことを抑える必要はありませんし、ぼくは気を遣ってため込むようなことは一切しません。そんな気を遣う必要があったり、何か言ったあとにケアしなくては腐ってしまうような人間は、レースの世界ではやっていけませんからね。
 だから、「困ったときに助け合う」 ということも、決して多くはないんじゃないかな。お互いにプロとして役割を担っているので、困っても 「自分で何とかしろ」 ということはよくあります。できなければ、給料がもらえない。それだけですからね。
 もちろん、第一線で活躍している、力量あるプロでも難しいシチュエーションの場合は助け合ったり、フォローしたりされたりはありますけど、“仲良し子よし” では厳しいレースの世界を勝ち抜いていけませんから。一人ひとりが最大限自分の能力を結果に結びつける努力をする。その集大成が総合力となって、チームを勝たせていくものだとぼくは考えています。
 
 
 
ドライバーとスタッフたちは、勝利のために、意見を戦わせながらコミュニケーションをはかる必要がある。プロフェッショナルどうしのコミュニケーションの中で、特に大事なポイントは 「ロスをなくすことだ」 と本山氏は指摘する。
 
 

ロスト・ロスの人間関係

 
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 まず、衝突を怖がっていては何もできません。ドライバーとエンジニアの間では、車のコンディションや調整方法について話をすることもあるし、戦略については監督とディスカッションをする。気を遣うと変に言葉を選んでしまったり、場合によっては意見を控えてしまったりすることがあるのですが、次にレースの予定が決まっていて、マシンの開発研究やセッティングの時間が限られている中で、遠回りをしているヒマは1秒たりともないんですよね。
 だから、そういう時間のロスをなくすためにも、思ったことはその場で、その時に、ストレートに言い切ってしまうことが大事だと思います。そのままぶつけるわけですから、もちろん衝突はありますよ。でもその衝突は、結果を重視しているからこそ出てくる衝突ですから、ぶつかりながら進んでいったほうがいいとぼくは思うんですよ。相手に情を持ってしまって指摘すべきを指摘できず、結果的にクルマの性能が上がらなかったりすると、それは途端に 「成績が落ちる」 ということを意味します。これでは誰一人幸せにはなれません。
 ですから、ぼくのコミュニケーションは本当にシンプルですね。思う → 言う → 考える → 言う。その繰り返しです。とにかく考えを明確に、「勝ち」 に向けてシンプルに、ショートカットしていくことが大事です。コミュニケーションを複雑に考えているとキリがないですからね。
 
 
 
 

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