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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

好きなことを仕事にしよう
麒麟児が語る顧客そして仲間論

 
 
会社経営に専念するようになった前澤氏はそれまで展開していたセレクトショップを集め、2004年12月にZOZOTOWNをオープン。インターネット上の 「街」 というコンセプトが多くの人々の共感を呼ぶようになっていく。2010年の11月にはリニューアルを行い、コンセプトを 「街」 から 「人」 に変更。サイトのトップページに商品に関するお客様のコメントを表示し 「にぎわい感」 を演出したり、ZOZOTOWNのバイヤーがファッションに関する情報を発信するサイト 「ZOZOPRESS」 を新たにスタートするなど、お客様どうし、お客様とスタッフ、お客様とブランドなど、あらゆる 「つながり」 を重視したサイトになった。こうしたコンセプトづくりは、どのような効果を狙ってのものなのだろうか?
 
 

ケチケチするなよ、太っ腹にやっていこうよ

 
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 もともとは、「リアルにあるような、自分たちで築く街を作ってみたい」 という発想からスタートしたのがZOZOTOWN。インターネットで自分たちの好きな店を並べて、そこにいるだけで楽しくなるような場所を実現したのですが、実はその数年後に、それに飽きちゃって(笑)。 「飽きた」 というよりは、「街」 の本質に気付いたのかもしれません。ただモノを買うことができるサイトではなくて、人々が集まって、何かのつながりとかコミュニケーションが生まれるのが本当の「街」の概念だと思いはじめて、ZOZOTOWNもそんなニュアンスの強いサイトになってほしいと考えるようになったんです。
 そう話すと、「SNSの機能を付加していくのか?」 と思われがちですが、そうじゃない。SNSは個人どうしのコミュニケートが大前提ですけど、ZOZOTOWNは、ネット上でのコミュニケーションをもっと広義にとらえて、「“ファッション” というキーワードのもとに人が集まりコミュニケーションを取る」 というところまでつなげていきたかった。だからこそ、「ZOZOPRESS」 やSNSサイト 「ZOZOPEOPLE」、アパレルショップ検索サイト 「ZOZONAVI」といった、お客様に付加価値となる場を用意したんです。
 お客様どうしが会話をするだけだったり、情報を発信するだけのサービスを無料でやっていると、「それが売り上げにどうつながっているのか?」 と言われることが確かにあります。ただ、正直なところ 「お客様が満足してくれたら、それでいいじゃないの?」 という答えしか返せないんですよ(笑)。だってそれが本音だから。それでもビジネスライクな後追いニュアンスを付けるなら、そうですね・・・。たとえば、「ZOZOPEOPLE」 で話されている内容はファッションの初心者にとっては参考書になりえます。また 「ZOZONAVI」 でリアルショップを紹介することで、普段ネットで洋服を買わない方にもサイトを見ていただくことができ、お客様の幅が広がるじゃないですか。そのサービスを利用していただいている方々がいつかZOZOTOWNで買ってくれるようになってくれたらいいな、それくらいです。「ケチケチしないで、太っ腹にやっていこうよ」 ということですね、単純に。
 
 
 
前澤氏の話でわかる通り、あくまでお客様が喜ぶサービスを是としているZOZOTOWN。それは単純なお客様第一主義という概念ではくくれない。そして同社は、サービスを提供する見返りに情報登録を求めたり、利益への返還を促す動線を基本的に作らない。つまり、前澤氏は、こうしたサービスを顧客囲い込みのための戦略とは位置づけていない。ここにZOZOTOWNが支持される秘密が隠されていた。
 
 

顧客リストなんていらない

 
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 私は、顧客を囲い込みたいと一切思っていないんです。人って、追いかけると去っていくじゃないですか? 恋愛もそうだと思いますが、囲い込んだり束縛しようとするとダメになってしまう。特にECサイトのように、お客様が自主的に訪れてくれることを必要とする場においては、こうした囲い込みは逆効果だと思うんですよね。
 顧客リストの厚みを、イコール、自社のブランド力と考える論調を否定はしません。しかし私は、今は膨大な顧客リストがそのまま力を発揮できる時代ではなくなってきていると考えています。ですので、ZOZOTOWNの場合はサイト独自のIDを作成しなくても、すでに皆さんがお持ちのIDを使ってお買い物ができるようにしました。今ですとYahoo!さんやmixiさんのIDをご利用いただけます。SNSの発展は日進月歩で目覚ましいものがありますが、私たちはSNSをしたいわけではないし、あくまでお客様の意思で訪れていただく場でありたいという気持ちが強い。そのうえで、提供する商品や情報を責任とプライドを持ってお客様に届けたいんですよ。そこがスタンダードなECサイトの概念と少し違うところかもしれません。
 
 
 
 
 

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