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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

好きなことを仕事にしよう
麒麟児が語る顧客&仲間論

 
 
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社員からの誕生日プレゼントの肖像画は人の背丈を優に越える
 ECの発展にともなって、洋服を買うという消費行動においても、消費者が市場を利用する方法や概念は変わっていき、それに合わせた形でリアルでも形態が変化していくのではないのでしょうか。私は、リアルショップにはもっとブランドのイメージや歴史を伝えられるショールーム的な存在になってもらい、逆にECは 「売る」 ことに徹していきたいと考えています。「洋服をネットで買う」 という習慣を根付かせていくためにも、消費行動を束縛するような囲い込みはお客様のフットワークを鈍らせるだけのものなのではないかと、私は考えているんです。
 
 
 
 
顧客があくまで自由に動き、自由に取捨選択できるECの可能性。その概念を純粋に追いかける前澤氏の言葉からは「より満足できる洋服選びをしてほしい」という “思いやり” すら感じられる。前澤氏は続ける。「ECだからこそ、愛が大事なんです」 と。その 「愛」 とは何だろうか?
 
 

商品に想いと愛情を込めていく

 
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 ECサイトは、商品のラインナップ、集客、サイト構築、物流という4つの要素がバランスよく機能しないと、ビジネスとして成り立ちません。この4つは総合バランスでして、どれかが突出していても、どれかが欠けていてもいけないんです。
 ECサイトが失敗するパターンとしては、大きく分けて二つある。
 一つめは、システムやサイトがしっかりしていて物流もきちんと整備されている、そのうえでプロモーションにもお金をかけているが、肝心の商品に想いとか愛情が感じられないというもの。これは大企業が陥りやすいパターンです。
 もう一つは、商品自体にはすごいこだわりや気持ちが込められているのを感じるのですが、サイトが利便性の低いものだったり、物流がうまく機能していなくてなかなか商品が届かなかったりするパターン。これは、職人さんのように手作りでやっている人たちが陥りやすいケースです。ECサイトはこのどちらでもない事例しか成功しません。でも、発展していく可能性があるのは、後者のほうですよね。商品に愛情が込められているのは間違いないので、物理的な環境を整えればうまくいくはず。
 結局は人が人からモノを買うわけですから、想いや愛情が感じられるほうの商品を買いたくなるじゃないですか? たとえば目の前に二つの野菜が並んでいるとして、片方には 「千葉県千葉市の農家・前澤さんが真心こめて一生懸命育てました」 と書いてあり、もう片方にはただ価格が表示されているだけだったら、どちらを選びたくなるか? ECサイトもそうで、サイトの中に愛情があるかどうかは、お客様が見るとすぐわかっちゃうんです。ZOZOTOWNは、「洋服が好きな人がやっているな」 とわかるから、見てもらえるし、利用してもらえる。だからこそ、自分が好きなもの、ビジネスという括りを外してでもこだわりを持てる要素があるものをプロデュースしていくのが、本当に大事なんですよ。
 
 
 
ECサイトというと、機能性・利便性の差異だけに目が向いてしまいがちだが、「むしろ人間味のある手法でなければ進化していかない」 というのが前澤氏の持論だ。そこに本当にユーザーが惹きつけられる温度感を備えていなければ見破られてしまう。「好きこそものの上手なれ」 と言うが、その意味を拡げて、好きだからこそ、顧客の心理を理解することが上手になる。それが前澤流のEC成功法則と言えるだろう。
 
 

顧客のニーズに自然体で添う

 
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 たとえば服を数点購入した時に、バラバラに届くハコ型のモデルは、どうしてもユーザーが使いにくさを感じてしまうでしょう。次世代のEC業界は、ユーザーの利便性や配送時の環境も考えて、合理化され、一元化されていくのではないでしょうか。エリアやテリトリーという概念がないことが、インターネットの特性です。つまるところ、ユーザーにとっては自分が好きなECサイトが一つあれば十分なんですよね。
 では、どういうサイトが選ばれるか? ZOZOTOWNでは、お越しいただくユーザーの方向性を限定せず、できるだけ多くの 「好き」 に対応できるよう、取扱いブランドを増やしています。極端なことを言えば、将来的にはユニクロからルイ・ヴィトンまで、国内ブランドから海外ブランドまで広く繋がっている拡張性を備えたい。その思想はシンプルで、自分たちがファッション好きなものだから、同じようにファッションが好きな人を取捨選択することなく、それでいて安心感を持って買い物ができる場を作りたいということ。それだけなんですよ。
 だから、競争に勝つために無理やり何かを犠牲にすることはしたくないですね。ZOZOTOWNは自分たちが好きなファッションでユーザーや消費者とのコミュニケーションを成功させていく路線に変わりはありません。そして、それが最大の強みだと自負していますから。
 
 

(インタビュー・文 新田哲嗣 / 写真 Nori)

 
 
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