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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

宮崎をどげんかした男の
不屈の政治家魂とリーダー論

 
 
お笑いのエッセンスを持ちながら、行政面でも人の心を明るく灯していく。そのポリシーをもって芸人として活躍した後、政治の世界へ飛び込んだ東国原氏。だが、そこには思いがけない批判の声もあった。
 
 

批判なんてへっちゃら

 
 政治の道を歩きはじめた時には、いろいろ言われましたよ(笑)。 「政治行政はそんな甘いもんじゃない」とか「格式がない」「品格がない」「程度が低い」などと言われました。でもそんなのへっちゃら。ユーモアや笑いは人々の幸せに必要なもの。それが政治に直結するのは、私の中ではごく自然なことです。
 だから、討論番組で口角泡を飛ばすときもあれば、片やバラエティで面白い話をしておどけてみたり、トボけてみたりすることがあってもいい。師匠(ビートたけし)も、お笑い芸人をやりながら映画監督をしていますよね。芸人としてのトボけた感じからは想像もつかないような、人間の生き方とか、社会病理を映画では問うている。私は師匠の作品はお世辞抜きで大好きなんですけど、巨匠としてお笑いの地位を上げていくと同時に、映画監督として日本の文化を世界に伝えて、世界中から賛辞が贈られてくる。素晴らしいですよね。そういうことを、私は政治で問うていきたいんです。
 
 
 
やがて機が熟し、宮崎県の地方行政が東国原英夫という知事を求めた。そして東国原氏は、議会や県民の期待に見事に応える働きを見せることになる。当時、県の行政のトップに立つにあたって、どのようなリーダー像を模索していたのだろうか?
 
 

空気を読む力をまとう

 
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 当時も今もまだまだ修業中で、未熟者ではありますが、言わせていただければ、リーダーの資質には重要なファクターがあると思います。それは 「空気を読む力」 だと私は信じています。もちろん、リーダーには実行力、決断力、想像力、洞察力、胆力、人間力・・・・・・そういった様々なファクターが必要です。しかし、私はそういうファクターは標準装備していて当たり前だと思っているんですね。それに加えて、空気を読み、場の空気を察知する能力が必要不可欠だと思っています。
 たとえば行政のトップですと、公務員として働かれている職員の方たち、これが県単位だと数千人から数万人いらっしゃいます。それと議会がありますよね。何より県民の皆様がいらっしゃる。これって、全て人なんですよね。人で組織・団体が構成されている。「雰囲気」というのは人が作り出すものですから、その人たちの心境次第で場の雰囲気が明るくなったり暗くなったり、変化していくわけです。他にも、友好的な組織や対立している団体、誰と誰は仲が良くて、誰と誰はいさかいがあるなど、非常に複雑ではあります。しかし、そんな中でどう調整をしていくのかという指針を得るためには、空気の読み方、場の読み方を間違ってはいけないわけです。
 よく、人事をやるときに 「適材適所」 と言われますね。しかしながら、適材適所と言ってもそんなにパーフェクトな適材適所はないと思うんです。「ある程度ここを犠牲にしてでもここに比重を置いて、この人は実務能力こそないかもしれないけど場の雰囲気を作るのがうまいから、総合職につけよう」 などと空気感の調整を考えるときに、完璧な適材適所というのは難しいところですね。ましてや、団体単位になったとしたら、もっと大きな影響力のやりとりになりますから。
 
 
 
「空気を読む」「空気を作る」――宮崎県知事時代、実際の議会運営で東国原氏はこのスタンスをとってきた。前知事が談合と贈収賄で逮捕され、当時の宮崎県内は決して、良いムードだったとは言えないだろう。さらに、東国原氏は元経済産業省出身の対立候補などを破っての初当選であり、議会はオール野党の状態。「そのまんま東に何ができるのか?」といぶかしむ目も多かった。しかし、東国原氏は持ち前の「空気を読む力」で、こうした雰囲気を次々に味方に変えていった。
 
 

東国原流“人心掌握術”とは?

 
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 シビアな環境ではありましたが、私が相手の協調や同調を大事にしてきたのは間違いありませんね。もともと、議会運営等々であまり対立構図をとるタイプではなかったこともありますが、いわゆるアウェー的な環境の中でしたから、反対意見が波紋のように広がったら、執行部の条例なんてみんな否決されてしまいます。それこそ綱渡り、薄氷を踏む思いもしましたが、それでも結果として、一つだけ、行財政改革の出先機関の統廃合が否決されただけで、あとの執行部提案は全部通ったことを考えたら、私のやり方は成功だったと言えるのではないかと自負しています。
 まずは空気を読み、空気を作る。ただ正論を吐いて正義を貫けばいいものではないでしょう。時には清濁併せ呑んだり、あるいは、自分が思っている以外のところでも妥協点を見つけたり、歩みよったり。ただし、主張を通すところは通す。トップには、そういう場で考え方とか空気を読む力が最も必要なんじゃないかと私は思っています。
 主張を曲げない、ブレないということも大切。ですが、自分がブレなくするためには相手を説得しなくてはいけないし、相手に同調して協力してもらわないといけない。そのためにはバランス感覚に優れ、気を遣うことができる人が、リーダーとしてふさわしいのでしょう。私はそうしてきましたし、今後もそうしていくと思います。
 
 
 
 

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