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スペシャルインタビューSPECIAL INTERVIEW

部下を育てるには「独立をそそのかせ!」
吉越流マネジメント術が支持される理由

 
 

時間を手にする者は成功も手にする

 
「そもそも任せる前に、モチベーションを持たせなければ、いかに関与しようとも成功は望めないのではないだろうか?」。そんな嫌らしい質問をぶつけると、吉越氏は業務とモチベーションアップについては同時進行で行うべきであると持論を説いた。
 
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 基本的には、仕事においても人生においても前向きな取り組み方をしなければ、仕事はただの作業になってしまいます。そのためには、最後までやりきらせるということが大事。一度始めたものを最後までやりきると、そのまま自信につながります。闇雲に外部から叱咤激励するだけの精神論では自信は植え付けられません。自信とは、内面から派生するものなのですから。
 関与とは、彼らに最後までやりきらせるという点で非常に重要なのです。もちろん部下たちも、小さな失敗をすることはあるでしょう。大きな失敗をされては困りますので、途中でその担当者のレベルにあわせて段階ごとにチェックを入れていくのですが、小さなものであればいくらでも修復は可能。その積み重ねで、失敗を少なくしていくものなのです。それを怖がっていてはいけない。そういう関係が生まれてくると業績がよくなる。ついで、給料もよくなる。つまりは、部下のやる気も出てくるというわけです。先にモチベーションありきではなく、モチベーションこそ現場で培われるものだと私は考えています。
 もうひとつ、モチベーションという点で言えば、「時間をうまく管理できる人」 にこそ宿ると私は思いますね。つまり、仕事に追われているという状態だと、自分の能力を疑ってしまいますが、逆に自分の時間の中で仕事量をきちんと管理できていることは、「自分は仕事を的確にこなせている」 という自信へとつながります。上司としては、やはり部下が自信をつけさせられるような仕事術を教えてあげたいものですよね。
 そもそも仕事というものは無制限なものです。ひとつのクオリティを追求するにしても無制限ですし、数をこなそうとしても無制限。そこで、ひとつのボーダーラインを設けてやるのです。まず、当人が会社に出社した際、今日やるべきこと(締切のもの) はどれだけあるかを確認してもらいます。仮に5つあったとしたら、その5つを必ずその日に終わらせてしまうというルールを設けるのです。
 ただし、そこにはもうひとつのルールが必ず添えられなくてはなりません。それは、残業をしないということ。その日は会議があるかもしれませんし、外回りがあるかもしれません。実質、定時までの空き時間が3時間だとしましょう。5つの締切それぞれにかかる時間を通常5時間だとしたら、到底残業しないと間に合いませんよね。しかし、残業してはいけないという鉄の掟があるわけですから、さあ困った(笑)。
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 とるべき方法は実に単純なものです。「3時間で5つを終わらせる」 ということ。無謀なように聞こえますが、これはジャック・ウェルチ氏が 「ストレッチ」 と言っているように自分の実力以上の負荷を自分に掛けていくことです。時間がない中で終わらせるためには、いつも以上に集中し、分析力、判断力を高めていかなくてはいけません。自分の能力を最大限使わないと、規定の時間には終わりませんからね。しかし、時間がない中でも何とか終わらせるという信念と集中力を持ってすれば、能力がストレッチされ、「時間がない」 という環境に適応した仕事がこなせるようになってくるのです。
 
 

インプットなきアウトプットはない

 
一日の仕事、一週間の仕事、一ヶ月の仕事、そして半年、一年と、自分の時間を管理できるようになってくれば、当然仕事に追われているという感覚はない。仕事や会社を乗りこなしているという感覚を持てるだろう。それが自信につながることは理解できる。さらに、そのように時間を区切ることで、さらにプラスのエッセンスが加わるという。
 
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体力・モチベーション・能力のヒエラルキー。何が大事かを考えたい。

 日本の会社でよくありがちなのが、「身を粉にして働く」 という奉仕精神です。サービス残業は当たり前、土日出社もなんのその。とにかく体力を目いっぱい使って、これ以上ないくらいに疲れ果ててから帰路へ就く。高度経済成長時代の名残か、そのようにしてGNP・GDPの発展に貢献することが美徳とされてきました。
 でもよく考えてください。へとへとに疲れきって、睡眠もままならず、また疲れを残した身体で戦場へと飛び出していく。そんな状態で、能力を余さず発揮できると思いますか?
 ビジネスにおいて、私が重要視していることがあります。それは、体力・モチベーション・能力のバランスです。能力を十分に発揮させるためには、まずしっかりとした体力があって、その上にモチベーション、つまり 「やる気」 が重なり、それらが能力を支えている関係性が重要です。
 会社は、モチベーションと能力に賃金を払っています。体力を使って馬車馬のように働いたところで、そのエネルギーは空回りしてしまいがちなのです。これは、日本の企業がプロセスを重視してきたことと密接な因果関係があるゆえ。体力を使って、結果に向けてこれ以上ない努力をする。その姿勢 (プロセス) で評価されてきた企業風土ができあがっているからでしょう。
 
 
 
 
 

 

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