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1、「はい!お会計です」 という声に会計士は何を考えるか?

 
 仲間と飲んで、そろそろ腰を上げようとしたら、店の奥から 「はーい!お会計です」 の声。注文したものがすべて出され、お客も満足して 「さあ、帰ろうか」 となった訳ですね。
注文したものがまだ残っていたり、間違って配膳されたにも関わらず、間違ってそのまま食べてしまった、でも注文したほうの品はどうしても食べたかった・・・。こんな場合はややこしくなりますが、通常はこの 「はーい!お会計です」 の声と同時に 「収益が認識」 されると私たちは考えます。しかしこの時点で売上を計上するとなると、事務手続きが煩雑ですね。いちいち 「はーい!お会計です」 と言った時刻を記録しなければならなくなります。
 
 そこで、通常はレジに現金が投入された時点が、売上計上時点となります。
馴染みの客で 「親爺!今日持ち合わせがないから、貸しといてくれる?」 となると、現金売上ではなく、売掛金の発生です。でも売上は計上されます。つまり 「収益は実現している」 と考えるのです。つまり全ての注文した食事が提供し終わり、お客側もそれを了解した時点で収益が実現します。これを会計学では 「実現主義」 といいます。ちょっと難しい言い方をしますと、この場合、「実現主義」 の観点からは 「財貨の移転の完了」 と 「対価の成立」 の二つの要件が必要となります。
 
 日本では収益の認識に関しての明確な会計基準が存在しておらず、包括的な記述しかありません。そこで日本公認会計士協会では、会計制度委員会の中に 「収益認識専門委員会」 を設置し、この問題を 「会計制度委員会研究報告第13号「我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)」として公表しています(関心のある方は国際会計基準(IAS第18号収益の認識)や企業会計基準委員会「財務会計の概念フレームワーク」もご覧ください)。

 
 さて、話が専門的になってしまったので居酒屋の話に戻しましょう。
 仲間とワイワイ喋りながら、飲み食いしていて、間違った料理が配膳され、気づかないで間違えて食べてしまったことに、支払いの際気づきました。酔っぱらった仲間は、「どうしてもその注文品を持って来い!」 と言い張ってます。でなければ 「値引きしろ!」 と叫びだしました。この場合、お店側は 「財貨の移転の完了」 はしたとの認識でしょうが、お客が文句を言っているので 「対価の成立」 について問題が生じています。つまり客側は、注文した物品の全数量は確かに受領したが、注文した物品が違っていたから 「財貨の移転の完了」 はしてないと言い張ってます (内心は、間違って食べてしまったほうも悪いのに!という気はあります)。
 こうなると、〈収益の認識〉の2要件が整いません。さあどうしましょう。
 
 日本基準(企業会計原則) によると、収益認識の基準としては、「売上高は実現主義の原則に従い商品等の販売または役務の給付によって実現したものに限る」 程度の表現です。
 収益認識の個別要件もIASには 5つの要件がありますが、日本には規定はありません。収益の測定についても明示されていませんが、通常は取引価額 (対価の公正価値) と解されます。
 それでは、国際会計基準(IAS第18号収益の認識)には何が書いてあるんでしょう?
 ・・・余計に分からなくなりそうなのでこれ以上深入りしないほうがよさそうです。
 まあ仲間の激怒も収まり、店側もお詫びのしるしに、ということで、少し値引きをしてもらい一件落着となりました。この時点で 「対価の成立」 が成り立ち、目出度く、売上の計上ができることとなりました。
 
 
 
 

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