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ビジネス 企業が取り組むべき新型インフルエンザ対策とは vol.1 BCPにおける位置づけ 企業が取り組むべき新型インフルエンザ対策とは ジャーナリスト

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第1回 新型インフルエンザ対策は
BCP(事業継続計画)の中に位置づけよ

  

地震災害と新型インフルエンザ対策の違い

 
 厚生労働省は2007年3月に新型インフルエンザ対策のガイドラインを策定し、政府・地方自治体・関係機関(医療・福祉・マスコミ・企業など)・国民のとるべき行動を定めている。そして、企業がとるべき行動を①対策の検討・立案を行い、②感染予防を検討し、③事業継続を検討し、④教育・訓練を行い、⑤点検・是正をくり返す、つまり、BCPにおけるPDCAサイクルをまわし、①~⑤の各項目で行うべき具体的な取り組みを示している。
 中でも、③の事業継続の検討では、すでに地震対策のBCPを策定している企業があることを想定して、地震と新型インフルエンザ対策の違いを表にまとめている。
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 地震災害は、BCP策定のもっともポピュラーなテーマであるが、地震と新型インフルエンザではリスクに対する考え方や対策が異なる。例えば、地震は限定された地域で起こる短時間の災害であるのに対し、新型インフルエンザは広範囲の被災が長期間にわたって続く(日本全国~世界規模にわたる怖れもある)。地震災害のBCPでは、停止した事業の中からどれを優先して継続させるかを考えるのに対し、新型インフルエンザの場合は事業をいかに縮小・停止していき、最終的にどれを残すかを考えなければならないケースもある。
 
 

アンケートから見えてきたBCPの中での対策の遅れ

 
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 企業にとって新型インフルエンザは、今年になって初めて明らかになったリスクである。今回の一連の騒動で、その対策はどこまで進んだのだろうか。
 経団連は7月30日、会員向けに実施した新型インフルエンザ対策のアンケート調査の結果を発表した。それによると、マスクなどの備蓄や情報収集、連絡体制の整備、職場の感染予防・感染防止策を行っている企業は8割近くに上ったが、国内の大流行時に事業をどのように継続させるかというBCPを策定している企業は32.1%にとどまったという(2025社を対象に行い、454社から回答を得た)。
 回答をした中で3割が策定済みということは、実際は1割に満たないのではないか。マスクの備蓄、連絡体制の整備、感染予防対策といっても、社員や家族に健康被害が及ばないようにするための対策であり、感染によって事業が中断した場合のリスクを管理する本来のBCPになっていないようだ。例えば、社員が出社できなくなって事業が継続できなくなった場合はどうするのか。実際にこの調査でも、継続業務のしぼり込みや業務継続体制の整備は22.5%、発生時の対応訓練の実施は7.3%とかなり低い数値だった。秋以降に予想される感染拡大に対し、まだ多くの課題を残していることがわかった。
 パンデミックによって社会がパニック状態に陥ったら、規模に関係なく企業は社会的存在として新型インフルエンザへのスタンスを問われることになる。どうしたらいいかわからない、いざというときは国や自治体の指示に従うという態度は許されない。新型インフルエンザは「ヒト」が媒介となるので、感染予防と事業継続には「拡げない」ことを徹底するべきだ。ある企業が1社だけでやっても意味がない。あらゆる企業がそれぞれのレベルで責任をもって対応することで、新型インフルエンザ対策が広がっていくのではないか。
 
 
 
 

 プロフィール 

古俣愼吾 Shingo Komata

ジャーナリスト

 経 歴 

1945年、中国生まれ。新潟市出身。中央大学法学部卒業。広告代理店勤務の後フリーライターに転身。週刊誌、月刊誌等で事件、エンターテインメントものを取材・執筆。2000年頃からビジネス誌、IT関連雑誌等でビジネス関連、IT関連の記事を執筆。2006年から企業の事業継続計画(BCP)のテーマに取り組んでいる。

 

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