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総務省が「自治体のBCP策定ガイドライン」を発行

 
 いま、もっとも企業のBCP導入の必要性を叫んでいるのは、BCP関連のコンサルティング会社と自治体であろう。ところが、企業にBCP導入を勧める自治体そのものにBCP(自治体の場合は業務継続計画) が導入されていないという現実がある。
 地震や水害などの自然災害が発生したとき、住民の拠り所は地元の自治体である。自治体のBCPに求められる課題は、災害が発生したときに自分たちが住民サービス業務を継続できるかどうか、さらに、住民や企業に対して災害復旧の作業をどう進めていけるかということだ。
 新潟県では、2004年5月に中越地震、2007年10月に中越沖地震に見舞われた。どちらの時も、震源地である小千谷市や柏崎市周辺では電話がつながらず、市のホームページもアクセスが集中して一時的に麻痺状態になった。そんな災害状況や復旧対策を見て自治体のBCPの大切さを重く考えたのかどうか、総務省は2008年8月に 「地方公共団体におけるICT (情報通信) 部門の業務継続計画 (BCP) 策定に関するガイドライン」 を公表した。
 業務継続方針などBCPの基盤作りから始まり、どの業務を継続するのかの決定、重要業務のリスク分析・リスク対応、訓練、行動計画の見直しに至るまで、自治体がゼロからステップバイステップで進められる内容になっている。
 BCPの導入サンプル (人口数千人の町村レベルと40万人の都市の2通り) も掲示しており、ガイドラインのステップに応じてサンプルのチェック項目と補足説明を読んでいくと、現状はどのレベルか、何をすべきか、手順がわかるようになっている。よくできているが、何のことはない。これでは、自分のことはさしおいて、自治体がこれまで企業向けに 「BCPを導入しなさい」 と提言してきた 「BCP策定のガイドライン」 そのままではないか。
 
 

BCPを策定している地方自治体はわずか2.4%

 
 なぜ、総務省が自治体向けにこうしたガイドラインを発行しなければならなかったのか。実は、総務省はこれに先立って 「情報システムに関する業務継続計画の策定状況の調査」 を行っており、その惨憺たる結果を見て大慌てに慌てたようなのである。
 調査結果によると、2008年7月時点でBCPを策定していた自治体は、都道府県レベルで6.4% ( 3団体)、市区町村レベルでは2.3% ( 41団体)。なんと、村レベルまでを含めた全体のパーセンテージでは、2.4%にしか達していなかったのだ。
 この調査によると、BCPを策定していない団体のうち都道府県の22.7% ( 10団体)、市区町村の1.1% ( 20団体) が2008年度中に、都道府県の27.3% ( 12団体)、市区町村の19% ( 336団体) が2009年度以降に策定する予定だとしていた。そして、次年度以降に策定予定がない団体のうち、都道府県の15団体 ( 44.1%) と市区町村の372団体 ( 21.3%) が、今回の公表を機に策定を検討する予定であると答えていた。

 逆に、策定予定のない団体のうち、都道府県では19団体 ( 55.9%)、市区町村では1320団体 ( 75.5%)が 「未定」 と答え、関心の低さを露呈したのだった。この背景には、「BCPなどと大げさなことをいわなくても、防災対策レベルの対応で十分ではないのか」 とBCPに対する認識が明確にされていないという状況があったのは否定できないだろう。

 
 
 

古俣愼吾

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