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ノウハウ ほめる達人、西村貴好の「ほめるは人のためならず」 第6回(最終回) 他人をほめることは、自己肯定につながる ほめる達人、西村貴好の「ほめるは人のためならず」 一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長 西村貴好

ノウハウ
 
皆さんこんにちは。日本ほめる達人協会理事長の西村貴好です。皆さんが毎日をイキイキと過ごせるように「ほめる達人」、いわゆる「ほめ達!」への道を指南するこのシリーズも、今回が最終回となりました。前回の最後に、他人の価値を認めてほめる「ほめ達」の行為が、自分自身の能力を高め、自信を持つことにつながるというお話をしました。まずはその続きから始めましょう。
 
 

ピグマリオン効果と、脳の人称の仕組み

 
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協会が発行している機関紙、『LICHT (リヒト)』
最初に説明したいのは、ピグマリオン効果について。これは米国の教育心理学者のロバート・ローゼンタールによる理論です。どういうものかと言いますと、期待を込めて他人に接すると、相手もその期待に応えるようになるという現象。例えば、学力が普通の生徒に対して、教える側の教師が、「彼は優秀だ」と思い込んで指導した結果、その思い込みをせずに指導した同等の学力の生徒よりも成績がよくなった――というものです。本当かと思うかもしれませんが、ローゼンタールはいくつかの実験をして、それを証明する結果を得ています。
 
ピグマリオン効果を踏まえてもう1つ、脳科学の分野では有名な、脳の人称の仕組みについて。これは「人間の脳は、自分と他人を区別できない」というもの。もう少し詳しく言うと、話した言葉に対して、脳は自分と他人を区別できないということです。
 
これも例を挙げましょう。ゴルフのタイガー・ウッズ選手は、ライバルがパットする瞬間も、「入れ! 必ず入る!」と念じるそうです。なぜか。それは、「外れろ!」と思った瞬間、脳には人称の仕組みがないので、自分に暗示をかけてしまうことになるから。
 
そのため彼は、自分にマイナスの暗示をかけないように、使う言葉をコントロールしているのです。一流のアスリートはこのように、脳の人称の仕組みをよく理解して、自分のプレーにプラスに働くような言葉を使っているんですね。
 
 

言葉は身体にも影響を及ぼす

 
あともう1つ、紹介したいことがあります。突然ですが皆さん、梅干を食べることをリアルに想像してみてください。塩辛い大粒の梅干です。・・・どうでしょう? 私が言葉にしたことで、梅干を食べる想像をしましたね? すると唾液が出てきたのではないでしょうか。これは言葉によって思いがつくられ、言葉によって身体に影響が及ぼされる例です。このことからわかるのは、マイナスの言葉を使うと、身体にもマイナスの影響が起きるかもしれないから、プラスの言葉を使ったほうがいいということですね。
 
ということで、以上に紹介した3点を踏まえて考えてみると、他人をほめること、他人の価値を認める「ほめ達」の行為が、自分自身の能力を高め自信を持つことにつながるのが理解できると思います。
 
 

他人への憧れは、自分に憧れの種を蒔く行為

 
他人の可能性を信じ、期待を込めて接する。そしてポジティブな声をかけることは、自分自身の可能性を信じるよう、自己暗示・ピグマリオン効果をかけていることにもなるのです。だから、他人の価値を発見し、それを認めることは、自分を認め、自分に自信を持つことにつながるんです。
 
他人の価値を発見する積み重ねが、自己肯定になる。皆さん、誰か憧れる人はいますか? 他人のいいところをたくさん見つけて、それに憧れてください。実はその行為、自分自身に、憧れの種を蒔いていることになるのです。
 
例えばあなたが、「あの人は気配りができてすごいな」と思ってその価値を認めているのなら、そのことだけで、自分にも気配りができる人間としての、種を蒔いているのです。なぜって、気配りできるかどうかに気付いたのは、他ならぬあなただからです。他人への配慮がない人には、気付きもしないことですからね。
 
ですから他者に抱く憧れとその事柄は、いつか必ず自分の言動の中に芽吹いてくるものなのです。
 
 

ほめる達人は人生の達人!

 
この連載のタイトルでもある「ほめるは人のためならず」。このことの意味について、理解を深めていただけたでしょうか。そうです。ほめることは全て、自分に返ってくる行為なのです
 
情報化が進んだ現代社会。そこに生きる私たちが日常的に目や耳にする情報量は、この10年間でおよそ、530倍にもなったといわれます。でも、ネットやテレビの中で飛び交っているニュース、人を不安にさせる情報が多いと感じませんか? 
 
現代社会は、実は言葉にできないボンヤリとした不安が蔓延しているのです。私はこの連載の1回目で、それを心の内戦状態と紹介しました。そんな時代の中で、自分の心を守りつつ楽しく充実した人生を送るためのツール、心のフィルターになってくれるのが「ほめ達!」なのです。
 
たとえ自分がピンチに陥っても、「ほめ達!」になれば「この状況は何のチャンスだろう?」と考えられるようになります。マイナスをプラスに変換するお話もしましたよね? ポジティブな考えを持つことで、心の中に安心がうまれる。その安心が、新たにポジティブな言葉、ポジティブな表情、そして新しいアイデアを得る助けになります。
 
さぁ、皆さんも「ほめ達!」になって、仕事の達人、人生の達人になってください! 半年にわたってご愛読をいただき、ありがとうございました。このシリーズはこれで終了になりますが、テーマを変えて新シリーズがスタートします。そちらでまたお会いしましょう!
 
西村貴好の「ほめるは人のためならず」
第6回(最終回) 他人をほめることは、自己肯定につながる

 著者プロフィール  

西村 貴好 Nishimura Takayoshi

一般社団法人日本ほめる達人協会 理事長

 経 歴  

1968年生まれ。大阪府出身の「泣く子もほめる!」ほめる達人。ホテルを経営する家の3代目として生まれ、経営術を学びつつ育つ。関西大学法学部卒業後、大手不動産に入社して最年少トップセールスを樹立。その後、家業のホテルを継いで経験を積み、2005年に覆面調査会社「C’s」を創業する。短所ではなく長所を指摘することが調査対象の企業成長に効果があると発見し、「ほめる」ことの重要性に気付く。数々の実績を上げる中で、2010年2月に「ほめ達!」検定を実施する、一般社団法人日本ほめる達人協会を設立し、理事長に就任。以降、検定を通じて「ほめ達!」の伝播に尽力している。著書に『繁盛店の「ほめる」仕組み』(同文舘出版)、『ほめる生き方』(マガジンハウス)、『心をひらく「ほめグセ」の魔法』(経済界)、『泣く子もほめる!「ほめ達」の魔法』(経済界)、『人に好かれる話し方41』(三笠書房)などがある。

 日本ほめる達人協会オフィシャルサイト 

http://www.hometatsu.jp

 西村貴好オフィシャルブログ 

http://ameblo.jp/nishitaka217/

 フェイスブック 

https://www.facebook.com/hometatsu

 
 
(2017.3.17)
 
 

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