B+ 仕事を楽しむためのWebマガジン

トピックスTOPICS

ビジネス 南半球でビジネスを考える vol.13 豪州娯楽ビジネス事情 南半球でビジネスを考える 経営コンサルタント

ビジネス
 

オーストラリアは退屈な国?

 
 「オーストラリアは退屈だ」「毎日何もすることがない」―― この言葉を、日本から来られた方々から何度も耳にしてきました。辟易するくらい事あるごとに口にする人もいたので、私もつい意地悪く、「面白くないのなら、日本に帰れば」 と、きつい言葉を発した経験があるくらいです。
 私自身は、この国で不便だなと思うことは多々あっても、特に退屈だと思うことは正直ありません。オーストラリアは一年中温暖な気候に恵まれ、眩しいくらいのブルースカイにいつでもお目にかかることができます。しかも日本では沖縄くらいでしかお目にかかれない美しい白浜が、車で30分ほど運転すれば、無尽蔵に眼下に広がっています。これを一人で一日ぼーと見ているだけでも悪くはないですが、休日、ビールを片手に友人たちとバーベキューなどをすれば、私はそれだけで十分満足してしまいます。
 
 それでも日本と比べてしまうと・・・。
 
 ここで、はたと考えました。「娯楽がない」 「退屈だ」 は 「不便だ」 と似たような意味で言われている場合があるのではないか。私は常日頃から 「オーストラリアは不便だ」 と言っていますが、「不便」 が 「退屈」 に横滑りしてしまわないのは、私の場合は生活の基盤がオーストラリアにあり、生きていくうえで必要に迫られて、不便を改善しようと日々努力、奮闘しているせいかもしれません。
 
 

ビッグプロジェクトのススメ

 
 さて今回のテーマである娯楽ビジネス。一昔前のオーストラリアであれば、生活がいたって質素だったので、娯楽ビジネスのニーズが成り立ちませんでした。なぜなら、娯楽というのはある程度生活にゆとりがあって初めて考えるもので、失業率が20%近い数字を誇って(?) いた1990年代のオーストラリアでは、娯楽などとても考えられなかったからです。
 それが近年は、世界的な景気低迷の中、オーストラリアは他国と異なり堅実な経済成長を続けています。経済成長のおかげで懐が豊かになったオーストラリア人は、フィッシュ&チップスなどの味も素っ気もない料理から、多少高価でもより美味しい料理を求める傾向になりました。人口がたかが2000万人程度のオーストラリアが、とある調査によれば、国民が外食産業に落とす金額が世界第6位という驚きの結果も出ています。
 
 ただ、元来娯楽の選択肢が少なかったオーストラリア人は、美味しい物が食べられる程度の娯楽でも満足しましたが、最近大量にオーストラリアに移民してきたアジア人を中心とする富裕層の面々は、この程度では満足していません。
 日本人に限ったことではないのですが、アジア人はより人工的な娯楽を好む傾向にあります。欧米人は暖かい太陽の下で、一日中寝そべって、本を読んでくつろぐのが贅沢な休暇の過ごし方ですが、アジア人は少々せっかちで、一ヶ所にじっとしているよりも、常に時間を惜しんで観光名所を網羅することを好みます。美しいビーチも、雄大な大自然も、はたまたコアラを代表とする目新しい動物も、何度も見ればその感動が薄まってしまうようです。
 オーストラリア政府の観光協会に勤務する友人が 「現在中国からたくさんの観光客がオーストラリアに訪れているが、そう遠くない未来に、日本人と同様にオーストラリアに飽きる日が来るのでは」 と憂慮していたので、こそっと 「問題を一発で解決して、かつ日本人観光客も取り戻せる秘策があるよ」 と耳打ちしてあげました。驚いて 「それはなんだ?」 と聞いてきた友人に、私は答えました。「ディズニーランドかラスベガスを作れば問題解決。観光客を呼べて、雇用も促進できる。一石二鳥でしょ」 ―― 友人は渋い顔。彼もその策の経済効果のほどは、はなから分かっています。でも権利を得るにも、都市を建設するにも、目が飛び出るほどの予算が必要で、残念ながらそれだけの予算がオーストラリアにはないようです。
 このコラムを読んでいただいている読者の方で、ファンドを組んで大々的なアミューズメントパーク建設や、カジノ都市建設をオーストラリアで計画される方はいませんか? 膨大な費用はかかりますが、それに見合う利益を手に入れられることは、請け合いです。
 
 

中小規模のプロジェクトのススメ

 
 国家プロジェクト並みの娯楽ビジネスはさておき、もう少し身近な話をしましょう。
 以前にゲーム関連で有名なセガが、オーストラリアに 「セガワールド」 なる物を設立しました。ゲームセンターを少し大きくしたアミューズメントパークです。しかしセガワールドは結局利益が上がらず、撤退してしまいました。私は、このアミューズメントパークのコンセプトは非常に良いアイデアだったと考えています。ただ問題はその設備にありました。日本のお台場や都市部にあるような魅力的な機器を取り揃えるならともかく、街中のゲームセンターと大差がない設備で、しかも料金はバカ高い。これでは集客は望めません。おそらく、日本にある最新アトラクションを取り揃えたアミューズメントパークをそのままこちらで再現すれば、オーストラリアでは滅多にお目にかかれない長蛇の列ができることでしょう。
 この他にも、飲食店であれば、オーストラリアにはラストオーダーが21時までというところが多くありますが、それを午前2時くらいまでに延ばすだけで集客が見込めます。もちろん住宅街とかではなく、市内等の繁華街でないと意味がないですけど。
 また、カラオケ店も、壁がぼろぼろで崩れ落ちているようなカラオケ店ではなく、日本にあるようなモダンな建物の店に変える。全くゼロの状態から新しい娯楽を生み出すのはいつの時代でも至難の業ですが、我々日本人はオーストラリアとは比べ物にならないくらい娯楽の選択肢がある国から来ているので、オーストラリアになくて日本には当たり前に存在する娯楽を理解しています。日本人だから知りえる娯楽状況をビジネスの発想に転換できる強みも持っています。
 
 中国人、韓国人等が、日本で流行っているものをいち早くオーストラリアに取り入れて利益を上げていますが、本家本元の日本人は後塵を拝しています。私は、自分たちが作り上げた文化を他に取られるのではなく、そろそろ利益を自分たち日本人で甘受しても良い時期に来ていると考えています。
 
 
 
 オーストラリアでビジネスを展開したい方々は年々増加していますが、中々第一歩が踏み出せないでいるようです。次回はオーストラリアでビジネスを行う際の注意点について書いていきます。
 
 
 
  南半球でビジネスを考える ~オーストラリア在住・日本人経営コンサルタント奮闘記~
第13回 豪州娯楽ビジネス事情
 

 執筆者プロフィール  

永井政光 Masamitsu Nagai

NM AUSTRALIA PTY TLD代表 / 経営コンサルタント

 経 歴 

高校卒業と同時に渡米、その後オランダに滞在し、現在はオーストラリア在住。永住権を取得し、2002年にNM AUSTRALIA PTY TLDとして独立。海外進出企業への支援、経営及び人材コンサルティングを中心に活動中。定期的に日本にも訪れ、各地で中小企業向けの海外進出セミナーなどを行っている。

 オフィシャルホームページ  

http://www.nmaust.com/

 ブログ  

http://ameblo.jp/nm-australia/

 
 
 
 
 

関連記事

最新トピックス記事

カテゴリ

バックナンバー

コラムニスト一覧

最新記事

話題の記事