8万kmの瞬間を
後から瑞兆にするために

よく思うんだけど、武将が出陣前に神社で戦勝祈願をしたら目の前を白い鳩が飛び立ってうんぬん、みたいな話があるじゃないか。瑞兆か。あれって後付けだよね。その時はなんとも思わない。ただ覚えてる。それで勝ったら、後から結び付けるんだ。
何が言いたいかというと、現在の目線以外でも物事を見ようということ。人間は節目で変わる生き物だ。今こう思えるのはあの時あっちに行ったからだ、とか、あの時あれに打ち込んだから今こうなれた、というふうに。そうやって体験を歴史的にとらえられる人のほうがいろんな意味で強い。
そうすると、印象に残るほどの努力も挑戦もしてこなかった人は、自分がどう生きてきたか、今どういう人として生きているか、わからなくなるんだよ。“手がかり”がないから。だから今世間の人たちが働き方改革に便乗して頑張らないほうに頑張らないほうに向かっているのは、どうかと思う。「あの時必死で働いたなぁ、頑張ったなぁ」と思い返せる経験がなくなっちゃうもの。
中小企業といえども
県大会優勝を狙え
おもしろいのはさ、夏の甲子園全国大会で大阪桐蔭が金足農業に勝って優勝したけど、両校とも、選手の普段の生活は365日練習漬けでいわゆるブラックそのものだからね。でも世間の人はそれには何も言わず、真夏の開催は酷だとか日程が無茶だとか、大会運営にケチをつけるんだ。ねぇ。
ちなみに言っとくと、事業経営は中小企業といえども県大会優勝を目指すぐらいじゃないと勝てませんからね。楽しく部活ができれば満足、放課後に仲間とつるめればいいって感覚だと、潰れるから。中には町内大会優勝すら目指さない小料理屋商法の経営者もいて、そういう人に限って“にわか金足農業ファン”になって「笑顔がいいね~、大阪桐蔭の子より高校生らしいね~、溌剌としてるね~」なんてぬかしやがる。
違うっての! 彼らは普段練習で極限まで追い込むから、せめて本番では自分を解放してるんだよ。それも笑顔でいたほうが緊張が解けて動きが良くなるのを知ってるから意識的にニコニコしているんであって、そういうことがわからない人にてめえの見たい面だけ見て感動されたって、彼らは嬉しくないんだよ。
写真が中心の生活
そして全国2位に!
2、3年前か。イマイチくすぶっている様子で勝人塾に参加されたので、個別で彼の経営する写真館をうかがわせてもらった。その時彼が話したのは、自分の写真は古臭いと言われる、と。でも、写真を見るとすごいの。被写体の表情がメチャ自然。カメラの存在が完全に消えてる。演出でのせた笑顔じゃない、本当の笑顔なんだ。構図とかライティングとかは今時勉強すれば誰だってうまくなるが、あの表情を引き出せるのは普通じゃない。
やり方を聞いたら、客がスタジオに入る前から、客が子どもなら一緒に来た親と話す会話を、耳をダンボにして聞いてるんだって。最近の出来事とか、何でも。スタジオに入ってからもカメラを構えながらできるだけ話しかけて相手の話を引き出して、心が開く瞬間を、ずーっと狙ってるんだって。
私も専門家だから写真の良し悪しはわかる。だから「古くない! コレはすごい!」と正直な感想を言ってあげた。彼はそれでやっと迷いが消えて、めきめき腕を上げていった。コンテストの主催者も嬉しかったと思う。テクニック先行の頭でっかちな写真ばっかりが賞をとっていたところに、久々に本物の写真師が現れて受賞したんだから。
島瀬さんは昔も今も写真漬けだ。毎日毎日撮影、撮影で、朝から晩まで写真のことばかり考えている。生活が写真を中心に回っている。上の世界に行く人はやっぱりそうなんだよ。それに対して周りが一般人の感覚で「そんな生活は変だ」「家族がかわいそうだ」なんて言おうものなら、それこそ変だよね。
ダイバーシティに逃げず
人一倍自分で勉強を
多様性、ダイバーシティか。あれはねえ・・・大変だよ(笑)。先日ある人が私の「一刀両断」ブログについてメールで意見してきた。サムネイルの、誰かを指差しているデザインが怖いからやめてくれ、って。それに対して仮に、「7年もこれでやってきてみんなこれに慣れてるのに、あなた一人の感想で変えるわけにいきません」と突っぱねるのも、ありだと思う。小池都知事が「排除します」って言ったあれだ(笑)。でも、東京五輪はダイバーシティを掲げてる。多様性を認める祭典だ! だからってわけじゃないが、私はこう考えた。
「なるほど、もう7年もこのままだし、変えてもいいな。それに、ブログを始めた頃はよかったが、53、54歳になってひとかどの者になった自分がこうやってたら、威圧的になっちゃうし」と。だからその人には、「確かにね。変えるよう業者に言っとくわ。ありがと!」と返信した。
これは一見その人に振り回されたように見えるだろうが、そうじゃない。多様な意見を聞くことで、私が自ら気付いて変えたんだ。もし私が多様性というものを理解せずこの人の意見を排除していたら、私は気付きに至ることができなかった。
ダイバーシティが大変だと言ったのは、私ぐらい底力がないとダイバーシティに振り回されてパンクしますよ、という意味だ。だから、底力がつかないうちは人の意見なんか聞くな。本を読んで人一倍勉強して自分の見解を育てろ。それすらもせず「多様性の時代だから」なんて言ってその時々の他人の考えに乗っかってラクすることを覚えてしまったら、後で泣くのは自分だよ。
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10月10日 とやま勝人塾in黒部
10月23日 商業界チラシセミナー
vol.23 働き方改革に便乗して失ってはいけないもの
著者プロフィール
佐藤 勝人 Katsuhito Sato
サトーカメラ株式会社・代表取締役副社長/日本販売促進研究所・商業経営コンサルタント/想道美留(上海)有限公司・チーフコンサルタント/作新学院大学・客員教授/宇都宮メディアアーツ専門学校・特別講師
経 歴
1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)など。新刊の『モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方』(同文舘出版)が好評発売中。
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