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ビジネス 佐藤勝人の「儲けてみっぺ」 vol.9 向き合うことの大切さ 佐藤勝人の「儲けてみっぺ」 商業経営コンサルタント/サトーカメラ代表取締役副社長

ビジネス
 
あけましておめでとうございます。佐藤勝人です。新年早々でなんですけど、皆さん、腰はお丈夫ですか? 私、年の瀬にギックリ腰やっちゃいましてね。痛いのなんの! どこに行くにも腰が90度に曲がったまま。みんなが気を遣って笑いを我慢してるから、それが逆におかしくて、私のほうが笑いっぱなしでした。あれだな。笑う門には福が来るそうだから、2016年も最高の年になること間違いなしだな。というわけでこの連載も、ヨロシク!
 
 

愛社精神の今

 
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三が日に家内安全・無病息災・合格祈願・
安産祈願の記念撮影で全店を回った獅子舞と
新年はこの話から始めよう。家電メーカーのシャープがやった「シャープ製品愛用運動」だ。社員に対し、「お歳暮に家電品を買うなら自社製品にしましょう。買ってくれたら2%ぶんの奨励金を支給します」とやったあれだ。役職ごとに目標額が提示されていて、広報部はノルマではないと言っているけれども、誰がいくら買ったか購入専用サイトを通じて会社が把握できるから、事実上のノルマじゃないかと批判された。
 
でも、社員が自分の会社のものを買うのは本来自然なことなんだけどな。昔はメーカーの社員は喜んで自社製品を買っていましたよ。なぜかというと、ハッキリとした違いがあったから。ソニーの製品にはソニーの、シャープの製品にはシャープならではの特徴があった。社員も「俺らのつくるものはコレだ。どうだ!」っていう自負を持っていた。ドラマ『下町ロケット』の世界だった。
 
でも今、みんなが売れ筋を追求した結果、違いなんてないでしょう。その結果、社員も自社製品への愛情なんて持てないでしょう。なのに、愛社精神を“つくる”ために上から「買え!」と号令をかけても、それは本末転倒だ。
 
 

社員を人間扱いしているか

 
要は、支配しようという発想はもう通用しないということです。かつて上司が部下を支配できたのは、情報を持っていたからでした。「お前、これ知らんだろう。俺が教えてやる」。「はい先輩! 勉強になります!」というふうに、情報による支配が成立していた。今は情報がみんなに行き渡っていて、会社の偉い人もパートのおばちゃんも、知ってることに大した差はない。しかも、だいたいの人は一応の学歴はあるから、情報さえあればそれなりに考えられる頭をみんなが持っている。
 
私が「従業員を人間扱いしましょう」と言うのはそこなんです。情報は全部開示しましょう、そうすればみんながそれぞれの立場で、ちゃんと考えて動けますから、と。
 
上司が従業員を人間扱いするとどうなるか。従業員がお客さんを自然と人間扱いしはじめます。だからシステム的にお客さんの囲い込みなんかしなくても、お客さんは自身を人間扱いしてくれるところに流れるようになっています。来てくれると嬉しいから、もっと良くする。お客さんも喜ぶ。もっと来てくれるからお互いが馴染む。もっと馴染むから「お客対店側」という対立構造が崩壊してお互いが親しくなる。もっと良くする・・・。システムを超えた人間的信頼関係の好循環が生まれる瞬間です。
 
 

支配ではなく、向き合う

 
とは言え、私も勘違いしていた時期がありました。今だからわかるし、冷静に話せることだけどね(苦笑)。
 
実は、サトーカメラはクレジット機能付きのポイントカードを日本で最初に導入した小売店なんです。ソニーがANAのマイレージカードを開発し、そのマイレージカードが世に出る前、その試験というか運営実験の話がサトカメに回ってきた。うちは商圏が「栃木県内限定」ということで明確で試しやすいっていう理由もあったんだろう。で、やってみたら、数年で発行済みのポイントつまりお客さんからの前金に当たるお金が年間約3億円になっていた。しかも、使われずに流れていくお金も結構ある。なるほどな~、大手がポイントで儲ける仕組みはこれかと、その時にわかった。ちょうど時代も魅惑の90年代だった。
 
でも、それから2008年にリーマンショックが起きて、ソニーがポイントカード事業の撤退を申し出てきた。こっちは面食らうよ。「お客さんから預かってるポイントはどうすんだよ! 運営を継続したいから代わりのカード会社紹介してくれよ」って。担当者は真っ青。それから何社か紹介してくれてクレジット会社と話をしたけれど、リーマンショック直後だったこともあり「責任が持てない」って言い方をしたのが、なんかねぇ・・・。このままうちのお客さんを騙し騙し魅惑のポイントサービスを続けることが果たしていいのか? すごく考えました。そこで「よし、止めよう!」って決めた。それは2009年のことだ。
 
お客さんには、ソニーがポイントカード事業から撤退するからと言ったところで誰も信用してくれないしね。「サトーカメラが潰れる!」「ポイント返せ!」「勝手にポイントを辞めるな!」の問い合わせが殺到しましたよ。もちろん全額お返ししました。ご迷惑をおかけして本当に申し訳なかったけど、現金バックだとうちのキャッシュフローがもたないから商品に換えさせていただいて、3年かけて約3億円分のポイントを完済させました。それで心底ホッとしたのも束の間、今度は東日本大震災で約1億円分の在庫がショーケースからこぼれ落ち、産業廃棄物と化した在庫の山々。潰れるほどの思いをしたんだけど、その話はまた機会があれば・・・。
 
ポイントカードを手放すって言った時、現場は相当不安だったと思う。「ポイントカードなしでどうやって接客するんですか!」っていう声も実際あったからね。だって20数年間蓄積してきた顧客情報だもん。当然だよ。じゃあ実際に、なくなってどうなったか? これが感動なんだよ。
 
現場の人間の視線が上に上がったの。物理的に。お客さんの顔を自然と見るようになった。目の前の、そこにいる、実際のお客さんと向き合うようになった。それまでは手元のPOSレジばっかり見ていた。ポイントカードを通して表示される顧客情報に目を向けて接客していた。でもそんなのは接客とは呼べないよ。本当の接客がどういうものか、私たちはあの時に気付いたんです。
 
ポイントカードで顧客情報を管理しているからといってお客さんのことをわかっていると思ったら大間違いだ。「データを元に」と言ったところで、そのデータそのものは自店で買った情報しかない、言い換えれば偏った情報じゃないのかな。そんな自店だけに偏った情報を鵜呑みにしてお客さんを仕向けて商品を買ってもらえたところで、それは本当の意味でお客さんと向き合ったとは言えない。むしろ、“このお客さん、一昨日も来てくれたな。でもお名前が思い出せないな、どなただったかな・・・”と思っていたら、正直に聞けばいいんだよ。単に「誰でしたか?」じゃ失礼だけど、「一昨日来てくださったの覚えてるんですけど、ごめんなさい、お名前はなんとおっしゃいましたか?」とまっすぐ向き合ってお聞きすれば、お客さんは喜んで教えてくれるよ。そうしたら、「あっ、そうだ! レンズ買ってくださったんでしたね。あれからどうでしたか?」なんてふうに、本当の意味での会話が弾むじゃないか。
 
お客さんや社員と本当の関係を結ぼうと思ったら人間として尊重し、先ずは私たちのほうから向き合わないといけない。サトーカメラはこのことに気付けて本当に良かったと思っています。
 
 
 
佐藤勝人の 儲けてみっぺ
vol.9 向き合うことの大切さ

 著者プロフィール  

佐藤 勝人 Katsuhito Sato

サトーカメラ株式会社・代表取締役専務/佐藤商貿(上海)有限公司・総経理/日本販売促進研究所・経営コンサルタント/作新学院大学・客員教授

 経 歴  

1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)など。最新刊『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)が好評発売中。

 オフィシャルサイト 

http://satokatsuhito.com/

 オフィシャルフェイスブック 

https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts

 サトーカメラオフィシャルサイト 

http://satocame.com/

 
 
(2016.1.13)
 
 
 
 

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