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ビジネス 佐藤勝人の「儲けてみっぺ」 vol.13 コストやリスク回避より大切なのは 佐藤勝人の「儲けてみっぺ」 経営コンサルタント/サトーカメラ代表取締役専務

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皆さんこんにちは。佐藤勝人です。毎年恒例のアメリカ商業視察セミナーから帰ってきて半月。「今年も収穫が多かったな~」と、あらためて思い返しているところです。これから皆さんへのコンサルティングにも活かしていくから、期待してください。
 
 

ライフの経営陣に自覚はあるか

 
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視察先の1つ、NYでは博多ラーメンの
一風堂が大人気だった
今回はこの話から始めよう。『日経ビジネスオンライン』の記事によると、食品スーパー大手の「ライフ」が今月から、パート従業員を対象に、「エリア社員制度」という新しい人事制度を始めるそうだ。意欲と能力が高いパートさんを店長の推薦で契約社員に昇格させ、雇用契約を各店舗との契約から本社との契約に変えて、複数の店舗で働けるようにして、さらに頑張れば正社員に登用される道もひらけるという。
 
制度を始める理由は2つ。まず、パートの争奪戦が激しくて、今いるパート従業員をできるだけ長くつなぎ留めたいこと。次に、一般的にパートは年収を配偶者控除の適用額以下に抑えるために1日の労働時間を制限するものだが、中にはもっと稼ぎたい人もいること。意欲があって能力も優れた人材は会社としてもフル活用したいから、今回の制度を考えたようだが・・・。
 
これ、あえて意地悪な見方をすれば、良いパートさんを使いたおせるようにしたいんじゃないの。なんでわざわざ昇格を複雑にするの? なんであっさり正社員にしてあげないの? 意欲も能力もある人材なら、なんでいつまでも、ふるいにかけられるプレッシャーの中で働かしておくの?
 
スーパーマーケット的な業態が利益を出そうとしたら、ローコストオペレーションに向かうのは自然な流れです。牛丼チェーンの「すき家」が深夜に1人で店を回させるワンオペで批判されましたよね。でも、どうしたってこの業態は、理想は無人店なんですよ、やっぱり。お客のセルフサービスで回す部分を増やして、レジも自動化して、品出しなどの裏方作業にマンパワーを集中させれば、スタッフが削れる。1人のスタッフを長くつなぎ留めておければ、入れ替わりのたびに教育するコストも削れる。これがローコストオペレーションの理想だ。
 
いっぽうで、小売業には個店化に向かう戦略もある。代表的なのが、コンビニなどのフランチャイズの業態だ。店舗ごとにオーナーがいて、各々の裁量でバイトや社員を雇い、仕入れを決める。そうすると、働く人たちが、「あのお客さん、今日もこの商品買ってったけど、あの感じだとたぶん明日も買いに来るな。補充しとこう」とか、「今年も今月のこの週だけ酒類が飛躍的に売れたけど、なんでかな。ああそうか、この先のお堀の桜が咲くのが毎年この頃なんだ」とか、自分の頭で考えるようになる。裏方作業より売り場の目利きが重要になるのが個店の特徴だ。すると、意外にこういう店では、地域の商圏内の催しものが生活感覚で頭に入ってる近所のおばちゃんの従業員のほうが、POSシステムなんかより頼りになったりするんだよね。
 
ライフの新制度はどっちに向かうんだろう。複数の店舗で働けるようにするというあたりから察するに、前者じゃないかなあ。1店舗50人として、100人で2店舗回してたのを80人か90人で回させるための制度に、最終的には、なっていっちゃうんじゃないかなあ。
 
どんな制度も良かれと思って導入するわけで、実際に運用を開始してから経営陣の自覚が問われます。今回のライフは、さあ、どうなるかな。
 
 

リスク回避最優先の風潮に物申す

 
次に「セブン-イレブン」について。経営陣の内紛が注目されているけど、今日取り上げたいのはそっちじゃない。これも日経の記事によると、セブンが法人向けに食事の宅配を始めるそうだ。今年8月までに全国1万4000店舗でサービスを開始し、オフィスのランチや会議場のお弁当のニーズに対応するというんだが――。
 
突然ですが、お母さん方にお聞きします。皆さん、例えばお子さんの部活の大会に保護者同士で連れ立って応援に行く時、お子さんたちの食べるお弁当は、どこで買います? 私、PTAやってたときにお母さん方から聞いたことがあるから知ってますよ。コンビニで買うことが多いよね。理由は、「安心だから」だよね。
 
実はそれ、企業も同じなのよ。少しでもリスクがあることはとにかく避ける。食中毒なんてそうそう起きるもんじゃないのに、問題にされるのが怖いから、会社の弁当は気付くと全部、コンビニの弁当になっちゃってる。弁当屋の弁当のほうが断然おいしいのはわかってるの。でも、弁当屋には頼まないの。防腐剤まみれなのも、大しておいしくないのも知ってるの。けど、コンビニで買っちゃうの。安心だから。もし万が一問題が起きた時、大手なら保証金も払えるだろうし(笑)。
 
でもさぁ・・・、なんでもリスク回避が最優先される風潮って、どうなの? そこが商品価値の一番の強みになるって、どうなの? たまたまちょっと当たってお腹下しちゃったとか、ご飯にホイルの切れ端が入ってたとか、そんなのまで問題視されたら、弁当屋なんか全部潰れちゃって、それこそ大手資本の思うツボだ。挙げ句の果てに舌も大手資本の味に馴らされて、何世代か経つうちに、気付いたらその土地の固有の食文化までなくなってました、なんてことにもなりかねない。
 
1つ救いなのは、調理スタッフごと来て、現場で料理をつくるケータリングサービスが、昔ほど高嶺の花じゃなくなってきたことだ。一般の人が寿司職人を呼んで仲間でホームパーティーを開くみたいなことも、まあまあできるようになった。企業なんかは特に、今後はケイタリングサービスを福利厚生に取り入れたら、案外おもしろいかもしれない。
 
商業者たる者、コストやリスクばっかり気にするんじゃなく、本質的な商業の楽しさを、お客さんも巻き込んで追求していきたいと思います。さあ、攻めて、攻めて、儲けてみっぺ!
 
 
 
 
佐藤勝人の 儲けてみっぺ
vol.13 コストやリスク回避より大切なのは

 著者プロフィール  

佐藤 勝人 Katsuhito Sato

サトーカメラ株式会社・代表取締役専務/佐藤商貿(上海)有限公司・総経理/日本販売促進研究所・経営コンサルタント/作新学院大学・客員教授

 経 歴  

1964年栃木県宇都宮市生まれ。1988年、兄弟とともに家業のカメラ店をカメラ専門チェーン店に業態転換させ、商圏をあえて栃木県内に絞ることにより、大手に負けない経営の差別化を図った。以来、「想い出をキレイに一生残すために」というコンセプトを追求し続けて県内に18店舗を展開。同時におちこぼれ社員たちを再生させる手腕にも評価が高まり、全国から経営者や幹部リーダーたちが同社を視察に訪れている。2015年からはキャノン中国とコンサルティング契約を結び、現場の人材育成の指導にあたる。主な著書に『売れない時代はチラシで売れ』『エキサイティングに売れ』(以上同文館出版)『日本でいちばん楽しそうな社員たち』(アスコム)『一点集中で中小店は必ず勝てる』(商業界)など。最新刊『断トツに勝つ人の地域一番化戦略』(商業界)が好評発売中。

 オフィシャルサイト 

http://satokatsuhito.com/

 オフィシャルフェイスブック 

https://www.facebook.com/katsuhito.sato.3?fref=ts

 サトーカメラオフィシャルサイト 

http://satocame.com/

 
 
(2016.5.18)
 
 
 
 

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