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7回 情報システムへの投資に際し知っておきたい税額控除

 昨今の企業経営において、自社のセキュリティ管理は重要項目です。そこで今回は、情報システムに投資した場合の税制上の特典である「情報基盤強化税制」について、お届けします。
 
 
情報基盤強化税制とは
 情報基盤強化税制とは、青色申告書を提出する法人又は個人事業者が、高度な情報セキュリティを備えた情報システムに設備投資した場合に、税制上の優遇措置があるというものです。
 
対象となる資産は、以下の4つになります。
  1. OS及びこれと同時に設置されるサーバ
  2. データベース管理ソフトウェア及びこれと同時に設置されるアプリケーションソフトウェア
  3. ファイアウォール(1又は2と同時に設置されるものに限る)
  4. 部門間・企業間で分断されている情報システムを連携するソフトウェアで、独立行政法人情報処理推進機構
    IPA)の評価を受けたもの
  ※ 上記1~3について、すべてISO/IEC15408に基づき評価・認証されたものに限る。
 
 
 適用を受けるにあたっては、資本金の多寡に応じ、投資金額の下限条件が決まっています。その基準は以下となります。
 
対象法人1事業年度における取得資産価額の合計
 資本金1億円以下 70万円以上
 1億円超10億円以下 3,000万円以上
 10億円超 1億円以上、但し年間200億円が上限
 
 上記表を見ていただければ分かるように、「情報基盤強化税制」というのは資本金額が少ない企業ほど有利な制度となっています。特に資本金1億円以下であると、取得価額=投資額にして1事業年度あたり合計が70万円以上で該当することになります(資本金1億円以下の企業ならではのその他のメリットについては、9月号の第4回コラムを参照)。
 
 
税額控除と特別償却
 それでは、該当条件を満たした情報設備投資を行った場合に、具体的にどういった税制上の優遇措置があるのでしょうか。
情報基盤強化税制に該当すると、2つの減税措置の内いずれかを選択できることになっています。
 
 1つは法人税額から、該当する情報設備投資額の7%相当額を税額控除できるというもの(計算式1参照)。つまり200万円の設備投資であれば14万円も「税金」が控除されます。経費ではなく「税金」そのものが控除されるという点で、効果は大きいと言えるでしょう。ただし控除額の上限は当年の法人税額の20%までとなっており、それを超えた分に関しては翌年度に限り繰り越せる仕組みとなっています。
 
 2つ目は、設備投資額の35%を特別償却できるというものです(計算式2参照)。特別償却とは、通常の減価償却で認められている費用に加えて、購入費用の特定割合を減価償却できる仕組みです。これにより費用が増加し、税金を抑えられるというメリットがあります。先述の200万円の設備投資の場合であると、通常の減価償却費に加えて、設備投資額200万円の35%にあたる70万円が購入した年度の特別償却費として費用計上できます。
 
 ここで、税額控除と特別償却のどちらを選ぶべきかですが、最初の1年間だけなら特別償却、長期で見れば税額控除が得になることが多いです。なぜかというと、特別償却は1年目の償却費は大きくなりますが、特別償却を含めても償却自体は1円の備忘価額を残した購入価額までしか認められないため、通算すれば普通に減価償却したときと変わらないからです。しかし税額控除なら、減価償却で計上した費用に加えて、設備投資額の7%の税金が差し引かれます。つまり、通常の減価償却分と税額控除額を足した分の節税効果が得られることになります。これにより、通算した場合には税額控除のほうがメリット大となることが多いです。
 
 ただ、当期・来期の所得がマイナス(つまり赤字)予想であれば、税額控除を選んでも節税効果は皆無です。それなら特別償却を選び、赤字を次年度以降に繰り越したほうがよい場合もあるでしょう。
 
 
[情報基盤強化税制の計算式]
 
(税額控除)…式1
設備投資額(取得価額)× 7
注)法人税額の20%が上限。超過分については翌年度に限り繰越可。
 
(特別償却)…式2
通常の減価償却費 特別償却費{設備投資額(取得価額)×35%}
 
 
 
 
 

 執筆者プロフィール 

今村仁 Imamura Hitoshi

マネーコンシェルジュ税理士法人 代表社員

 経 歴 

京都府京都市出身 立命館大学経営学部企業会計コース卒 会計事務所を2社経験後、ソニー株式会社に勤務。その後2003年今村仁税理士事務所開業、2007年マネーコンシェルジュ税理士法人に改組、代表社員に就任。税理士・宅地建物取引主任者・CFP等ベンチャー・起業家・中小企業の参謀役税理士(SZ)として、会社設立から株式公開支援まで幅広くサポート。大阪・京都・神戸・滋賀・奈良・東京・横浜を中心に活動。マネーコンシェルジュ税理士法人(旧今村仁税理士事務所)

 オフィシャルホームページ 

http://www.money-c.com/

 

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