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 心理学というのは、ゲームとかあてにならない神秘的なものというイメージを持つ人も多いだろう。好意的に解釈してくれる人なら、カウンセリングをイメージするかもしれない。しかし、心理学というのは、脳のソフト全般を研究する学問である。能力開発にも人間関係にも、メンタルヘルスにもみんな使えるものだ。
 ということで、このコラムでは、私のこれまで学び、実践してきた心理学をもとに、それを仕事の様々なシーンにどう応用できるかを伝授していきたい。
 
 

能力と人間関係はトレードオフか

 
 職場の人間関係に振り回されて仕事ができないと悩む人は少なくない。あるいは、「仕事ができると “性格の悪い奴” と思われて人間関係がうまくいかない」 という人もいるかもしれない。ただ、私には、日本人の中に、どうも仕事能力と人間関係能力がトレードオフの関係のように思っている人が多いような気がしてならない。
 日本ではしょっちゅう聞くが、アメリカではめったに聞かない言葉に、「勉強ができる奴は性格が悪い」 というものがある。アメリカ人というのは、どうも頭のいい奴はなんでもできると思っているようで、逆に勉強ができる人間は、対人関係もそつなくこなすと思っている節さえある。日本のように政治のトップを人柄で決めるなどということはなく、知的能力の高さと、性格や人間性のよさの両方がトップには求められる。逆に言うと、知的レベルの低い人間は、犯罪を起こしやすいとか性格もねじけていると思われがちだ。だから、弱者には冷たいお国柄になるのかもしれない。
 そういう国だから、知的レベルが高いのに世の中で成功できないという事態はありえないこととされてきた。ところが、調べてみると、ハーバードのビジネス・スクールのような超エリート校の卒業生の2割くらいが社会で成功できていない。
 アメリカの面白いところは、その原因を究明しようという学者が出てくることだ。そして、導かれた結論が、EQ能力の低さである。EQという概念を考案したエール大学のピーター・サロヴェイとニューハンプシャー大学のジョン・メイヤーによると、EQの五大要素は以下の通りだ。
 
1. 自分の感情を正確に知る
2. 自分の感情をコントロールできる
3. 楽観的にものごとを考える、もしくは自己を動機づける
4. 相手の感情を知る    
5. 社交能力、対人関係能力
 
こういった能力が低ければ、多少頭がよくても成功できないのは、むしろ日本人のほうが納得できるかもしれない。
 
 

言い訳よりも、トレーニング

 
 さて、本題に入るが、アメリカ人というのは、こういう能力が低い人についても、教育やトレーニングでなんとかなると考えるようだ。EQ概念を世に広めたダニエル・ゴールマンはしきりに、学校教育やエグゼクティブ教育、リーダー教育にEQ教育を取り入れろという。IQ教育を否定するというより、それにプラスして、本物のエリートを作ろうというのだ。まさに、win-winの考え方である。
 日本でも、EQの翻訳書が出たが、IQよりEQという感じで、IQに否定的な宣伝のキャッチコピーだった。
 職場の人間関係に悩む気持ちはわかる。具体的にどんな悩みをお持ちかを教えてもらえれば、心理学の専門家としてアドバイスできることもあるだろう。
 ただ、一つだけ言えることは、対人関係、人間関係と仕事能力は両立できるし、そうあるように心掛けないと、最終的な勝ち組にはなれないということである。
 
 巷にたくさんの対人関係の改善本がでているようだが、そういうものを参考にしながら、対人関係能力を磨いていく。ただ、それに忙殺されたり、自己満足するのではなく、いっぽうで、仕事術の本を読んだり、実際に勉強すること、経験を重ねることで仕事能力を磨いていく。その両方をやっていかないといけない。
 人間関係が下手なら下手でも悪くないが、それに振り回されて、能力を高めるためのエネルギーや時間を奪われるのはまずい。飲み会などつきあわなくても、人間関係をうまくやっていくテクニックはいくらでもある。一番まずいのは、人間関係を仕事ができない言い訳にすることだ。
 
 ビジネスパーソンたる者、人間関係も仕事能力も両立できると信じて、きちんとその両者を磨くように心がけるべし。
 
 
 
 
 心理学で仕事に強くなる ~和田秀樹のビジネス脳コトハジメ~
vol.1 人間関係と仕事を両立させる

 執筆者プロフィール  

和田秀樹 Hideki Wada

臨床心理学者

 経 歴  

1960年大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院にて研修、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデント、東京大学医学部付属病院精神神経科助手、アメリカ、カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科を経て、国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)。2007年、劇映画初監督作品『受験のシンデレラ』でモナコ国際映画祭最優秀作品賞受賞。2012年、第二回作品『「わたし」の人生』公開。主な著書に『マザコン男は買いである』(祥伝社新書)、『「あれこれ考えて動けない」をやめる9つの習慣』(大和書房)、『人生の軌道修正』(新潮新書)、『定年後の勉強法』(ちくま新書)、『痛快!心理学 入門編、実践編』(集英社文庫)、『心と向き合う 臨床心理学』(朝日新聞社)、『最強の子育て思考法』(創英社/三省堂書店)、『大人のための勉強法』(PHP新書)、『自己愛の構造』(講談社選書メチエ)、『悩み方の作法』『脳科学より心理学』(ディスカバー21携書)など多数。

 オフィシャルホームページ 

http://www.hidekiwada.com/

 
 
 
 

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