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高齢者向け配食サービス「シニアイーツ」を手がけ、外食・中食ビジネスのコンサルティングなども行う、upside down productions(アップサイダウンプロダクションズ)有限会社の代表取締役である宮本剛史氏に、コロナ禍後における飲食業界の変化や、今後の中食ビジネスのあり方などについて語ってもらうインタビューの後編。
 
デリバリーやテイクアウトのような“中食ビジネス”自体はコロナ禍以前にも存在していたものの、そのようなサービスを今まで行っていなかった飲食店も、弁当メニューを用意したり、配達に対応するようになったりと、既存の業態からの変化も見受けられる。コロナ禍が収束した後の飲食業界では、中食ビジネスはどうなるのか。宮本社長に聞いた。
 
 

デリバリーで売れる商品と売れない商品

 
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――飲食業の業態の変化と言えば、最近は特にデリバリーサービスを導入する店舗が増えていますよね。大きなボックス型のカバンを背負った配達スタッフを街中でよく目にするようになりました。
 
実は、緊急事態宣言が発令される前、3月上旬に、私も調査を目的にウーバーイーツの配達パートナーを自ら行ったんですよ。ウーバーイーツのシステムを実際に体験したうえで、どのようなお店が流行り、どのような商品が売れているのか、そして、どんな人が買っているのかといったことを調査しました。その結果、興味深いことに、売れている商品が二極化しているという事実が判明したんです。
 
――二極化というと、どのように分かれているのでしょう?
 
私が調査したところでは、売れている商品のうちの一つは、もともと知名度のあるチェーン店や有名店の“いつもの定番商品”でした。そして、もう一つは、一般的に有名ではないけれど、そのお店でしか食べられないような“独自の商品”だったんですよ。ここで言う“いつもの商品”とは、ほとんど誰しもが今まで食べたことがあるような、普遍的な商品という意味です。
 
言い換えれば、売れているのは一般的な多くの消費者が今まで食べたことがあり、なおかつそのお店であれば間違いなく“おいしい”ということがわかっている既知の商品か、まだ一度も食べたことがなくても、好奇心や想像力を刺激される未知の商品だったんです。
 
――味を知っている安心感から購入するケースと、知らなくても好奇心をそそられて購入するケースが売り上げを占めていたわけですね。逆に売れなかった商品は何が原因だったのでしょうか。
 
有名ではないお店の、“いつもの商品”は売れていませんでした。つまり、他の有名店や顧客が知っているお店で食べたことがあるような定番の商品でも、その顧客にとって初めてのお店がつくるものとしては、おいしいかどうかかがわからない。それが明暗を分けたんです。判断基準や訴求力が弱い、中途半端な商品ということですね。
 
この結果からわかったのは、チェーン店やFC店ではない、個人経営の飲食店で中食ビジネスに参入するのであれば、他店と被らない個性的な商品や、消費者に伝わりやすく、なおかつそのお店のこだわりが見える商品を開発する必要があるということだと思います。
 
また、たとえすぐにコロナ禍が収束しても、コロナ禍以前ほど、そう簡単に売り上げはもとに戻らないと予想しています。ですから、今後もデリバリーやテイクアウトサービスを続けていく来店型の店舗は少なくないでしょう。ただ、既存の商品をそのままデリバリーやテイクアウトにするだけではなく、より戦略的に売れるものを開発し、複合的に店舗を運営していくことが、これからの飲食業界には必要であると考えています。
 
 

アフターコロナの時代における飲食店の形

 
――従来のような顧客が来店する“外食”に加えて、デリバリーやテイクアウトサービスのような“中食”も同時に行っていくことが、今後の店舗運営のスタンダードになっていくと。
 
そのとおりです。デリバリーやテイクアウトを併用し、複合的な売り上げをつくることにより、不測の事態にも強い店舗運営ができると考えています。特に配食サービスは、顧客の来店を待つのではなく、営業で顧客を獲得し、固定客として積み上げ、売り上げを安定して増加させることができる。それによって盤石な経営基盤をつくり、その後の経営計画をスムーズに立てることが可能なんです。
 
また、配食サービスは定期的に商品をお届けするので、夕食のみのお届けだったり、または昼食と夕食を両方提供したりと、店舗によって時間帯を選ぶことができますし、昼食はお昼前に配達が終わり、夕食は夕方の前に配達が終わります。ですから、飲食店の営業時間のピークを避ける形で、空いている時間に売り上げをつくることもできるわけです。
 
――来店型を主業務とする店舗も、その経営を補強する手段の一つとして考えれば、今後もさらに中食への参入増加が見込まれますね。
 
そうですね。現在のところ、弊社で行っている中食ビジネスの開業や参入への支援は、既存の店舗を持っている飲食店を対象としています。これは初期投資やランニングコストが少なく済むことはもちろん、その飲食店の力と弊社のノウハウをかけ合わせて一緒に事業をつくっていくことで、まずは市場を成長させていきたいという思いがあるからなんですよ。いろいろな飲食店と組む中で、魅力のあるメニュー開発やサポート体制をつくり、市場を活性化させ、飲食店以外の業種でも安心して参入していただけるようにする。その結果として、配食業界により多くの多様性をもたらしていきたいと考えています。
 
――テイクアウトやデリバリー、配食サービスといった中食の業態が、より一般的になり、飲食店側もサービスの幅が広がれば、前回おっしゃっていたような高齢者向けのメニューなども含め、多様化がますます進むのではないでしょうか。
 
ええ。個人的には、デリバリーでももっと高級志向なメニューがあって良いと思いますし、高齢者でも、たまには体に悪そうなジャンクフードを食べても良いと思うんですよ(笑)。そのように、人々の食の楽しみ方や、多様性をこれからも大事にしていきたいですね。また、私は現在、デリバリーやテイクアウト用の包材にも注目しています。最近はどうしてもコストの問題で、よくある既製品を使うお店が多く見受けられます。しかし、これからはどのお店もサービスのブランディングのため、店舗の内装やイメージの表現、または食卓を演出する意味で、包材やカトラリー、包装の仕方なども差別化が進んでいくでしょう。そして、エコ、オシャレ、機能性など、包材にも多様性が広がっていくと思うので、そのための開発を行うのもおもしろいのではないかなと考えています。
~了~
 
アフターコロナの時代における飲食業界の形とは?
~中食ビジネスの拡大と多様化~
(2020.07.03)

 著者プロフィール  

宮本剛史 Miyamoto Takeshi

upside down productions(アップサイダウンプロダクションズ)有限会社 代表取締役

 経 歴  

北海道出身。上京後、牛丼チェーン、居酒屋などで勤務した後、宅配ピザ店、宅配お好み焼き店で店長やSVを経験。その後、高齢者向け配食サービス企業で店舗の運営、加盟店の開業支援、コンサルティングなどの業務に携わった。2010年に独立し、配食サービスを行う店舗を経営。2019年12月に店舗を売却し、配食サービスに参入する店舗や企業への開業支援事業「シニアイーツ」を開始した。upside down productions(有)では、店舗運営に関するコンサルティングに加え、デザインやメディア編集など幅広い業務も手がけている。

 ホームページ 

https://senioreats.me

 
 

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